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   同時通訳という仕事

 同時通訳は天職、中谷まりさんの場合

取材・文/佐々木真理


image 英語が好き、もっとうまくなりたい、そう願う人が一度は憧れる仕事が同時通 訳。しかし、英語ができるだけではこの仕事はこなせない、というのも事実。今日ご紹介する中谷さんは、20代の若さながら広いジャンルで活躍中。技術や知識だけではない、この仕事に必要な「特別 な何か」。それはいったいどういったものなのだろうか。

 
オリンピックのボランティア通訳が発端で天職に。
将来は世界平和に貢献できる仕事を目指したい


中谷まりさんが同時通訳という仕事を志したきっかけは、大学4年の時にリレハンメルオリンピックの公式通 訳を経験したこと。ボランティア通訳で、しかも渡航費20万円は実費だったが、応募者数750名中の2名に選ばれ、名誉と責任のある仕事を成就したいという一心で参加した。

「スピードスケートの堀井選手がこの時に銅メダルをとったのですが、私が入っているブースの前がスタートラインで、緊張感がひしひしと伝わってきました。メダルを取った後の会見で通 訳を担当し、彼が感じている喜びを私が伝えるというときに、彼と同じ波長になったように感じました。妙な表現かもしれませんが、まるで巫女になったような気がしたんです」。

同時通訳は“巫女”であると感じたのは、臨場感あふれるオリンピックだけではなかった。大学卒業後に勤務した音楽関係会社でアーティストリレーションズ(渉外) を担当。東京・南青山にあるジャズのライブハウス『ブルーノート』で来日アーティストの世話役を務めた時にも、アーティストたちから「通 訳をしているとき、同じバイブレーションを感じていただろう」と何度も言われたという。「スポーツ選手やアーティストは魂がピュア。彼らに神から授かった“ギフト”を大事にするようにと言われて、通 訳の仕事が天職だと思いました」。『ギフト』というのは、才能を意味する。中谷さんは仕事で出会った人たちから才能を見いだされ、それが励みとなって、様々なジャンルに通 訳にチャレンジしてきた。

フリーランスになったのは26歳のとき。きっかけは長野オリンピックの時にNHKに採用されたことだった。現在は登録しているエージェントからの依頼はもちろん、OL時代に培った人脈からの仕事が舞い込む。NHKの「アジア情報交差点」、CNNの「ショービズ・トゥデー」の放送通 訳をレギュラーで担当。CNNの収録の場合はスタジオへ行き、ビデオを見て原稿を作成し、アナウンスまで行う。またスポーツではメジャーリーグ来日のセレモニーでアナウンスを担当、企業の会議通 訳のほか、映画監督やミュージシャンなどエンターティナー系の通訳と、多彩 に活躍中。

「同時通訳が終わると、顔が必ず火照っているんです。この仕事は常に集中力が必要。ものすごいエネルギーを使っているんだなあと、つくづく感じますね」。今後は通 訳のピークに当たる40歳をメドに、国際会議の通訳を目指したいと、意気込む。「世界平和に貢献するような仕事をしたいですね」。『貢献』という言葉を、実に清々しく語ってくれた。

中谷まりさん(28歳)/プロフィール

4歳から15歳までアメリカの東海岸で暮らす。国際基督教大学卒業後、'94年広告代理店、'96年音楽関連の会社でそれぞれ勤務した後、'98年フリーに。英検1級、TOEIC985点、TOEFL670点。

中谷さんからひとことアドバイス
「とにかく、どっぷり英語の環境につかること。英語のラジオを聞いたり、映画は字幕を見ないで観る、また辞書を読むのも効果 的です」



明日は「ツアーガイドから裁判まで、さまざまな同時通訳の現場」