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Q:今年で来日して26年というピーターさん。日本語で『10年ひと昔』といいますが、もはやそれではおさまらない在住歴は、日本との相性がよかったからなのでしようか。
A:欧米の社会って、すごい競争社会なんです。ぼくがいた頃のイギリスはアメリカよりはまだマシだったけど、人と競い合ったり、相手を蹴落としたりするのは当たり前。そういう競争の激しい世界、僕には合わなかった。アメリカという国に魅力を感じながら、仕事をしたいと思わない理由はそれ。彼らは子供の頃から競争するのが美徳だから他人にもそれを強要するしね。それにくらべると日本の社会はずっと仕事がしやすかった。
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Q:日本も学歴偏重社会といわれて久しいのですが・・・。
A:僕は学歴とは関係なく日本に来たし、仕事のうえでは音楽とか日英のバイリンガルといった自分だけの領域を持っていたのも幸いしたと思う。25年前の日本には、まだ僕みたいな人間の数が少なかったから。今だったら日本語が出来る英国人もたくさんいるし、あの時のようには重宝されなかっただろうね。
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Q:言葉や音楽といったスペシャリティがあったから、日本でうまくやれたということですか?
A:それにワリと順応性のあるタイプだったということも大きかったと思う。外国で生活するって、言葉が出来るだけじやダメ。自己主張するところはしっかりして、自分が大切に思っている部分に関してはトコトン主張する。でも、それ以外の、たとえば日常のこととかは『郷に入れば郷に従え』の精神で柔軟に対応する姿勢がないと。僕は日本にいるんだから日本語を使うのは当然と思ってやったし、仕事のやり方にしても出来るだけ日本的にやるようにしましたから。
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Q:日本的って、たとえばどんなこと?
A:日本人って具体的じゃないでしょ。かたや英語の世界っていうのは思っていることをひとつひとつ全部言語化して、具体的に思っていることを相手に伝える世界。よく日本人はイエス、ノーがはっきりしないっていわれるけれど、僕はそういうあいまいさも含めて日本と付き合っていくことが出来た。
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Q:違う文化圏の人間として違和感はありませんでしたか。
A:時と場合によりますね。来たばかりの時期にハラ芸という言葉を使われて、全く理解できなかったことがありました。あれは今もすごく嫌いな言葉です。でも、一方で日本人の金銭感覚のあいまいさとかはあまり気にならないんです。たとえば日本でアルバイトを頼まれると、その仕事に対して、いつ、いくら支払われるみたいなことって、まずいわないでしょう?
僕はそういうのが全然気にならなかった。もしこれがアメリカ人だったら、ヘタすれば契約書を書かせるぐらいのことはしますよ。それは要するに、払うべきはずの相手が払わずに逃げてまうというようなことが日常的にあるからで、自分の国がそうなら当然他の国もそうだろうと思っている。僕は何か頼まれても、内容が面白ければマアいいかなってなっちゃう。そういう部分があったからこそ、日本でうまくやってこれたんだと思います。
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Q:それではピーターさんから見た、日本的あいまいさの悪いところってどんなところでしょう?
A:仕事で困るのは、相手の考えていることを確認しないで、勝手に想像で物事を進めてしまうところ。相手は実は全然違うことを考えているのに、確認しなかったために大きな問題に発展してしまうとか、日本人と仕事をしていてよくそういう場面
に出くわします。
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Q:やはり言葉の足りなさが原因ですか。
A:個人的な話になりますが、うちの女房と付き合いはじめた頃、よく彼女に日本人同士なら説明しなくていいことを、いつもいつも言葉にしなくちゃいけないのはどうしてなんだと訴えられたことがあった。僕の方でも、彼女は見るからに不満があるようなのに言わないからわからない、自分は何か悪いことをしたみたいだがそれが何なのか理解できない・・・ということはありましたね。でも、本当に日本人同士なら以心伝心、何も言わなくても分かりあえるのか。僕は必ずしもそうじゃないと思いますよ。分かりあえるって思い込んでいるだけで、お互い気持ちを確認し始めたら、こんなに違っていたのかとみんなショックを受けるんじゃないかな(笑)。
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Q:日本的ゆえの良さもありますよね。
A:基本的にお互いを信頼している、疑い深くない社会という点では素晴らしいと思います。ただ、それは外から入ってきた人間が少ないから出来た社会であって、日本も変わりつつあります。社会経済が変化し、3Kと呼ばれる仕事を多くの日本人がしたがらなくなり、必然的に外部からの労働力が必要になってきた。今まで触れたことのない文化圏から来た人間と共存するのだから、いろいろと摩擦も起きてくる。それまでは何の心配もせず、みんなが信用しあって生きてこられたところがだんだん崩れてくる。鎖国しないでやっていこうとすると、どうしてもそういうことに直面
せざる得ないんですね。これからの日本は、僕が魅力と感じていた部分は薄れていくのかもしれません。国際的になるというのはそういうことだから、いいことなんだけど・・・難しいね。
photo: 清野泰弘(フォトオフィスプラスワン)
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